シュッ

周りを包む金色の光が収ると、俺達は漆黒の森の中に立っていた。

「…これが漆黒の森か…。」

「なんだかおかしな所だね。ねぇ、ロニィ、森の木を見て!まるで切り絵の様な…ほら、紙で出来た木だよ。」

エドガーは、近くの木の裏側に回り込みヒョコリと顔を出して言った。
確かに、その木は紙のように薄っぺらく薄墨色をしていた。

「おい、空を見てみな。真っ暗な夜空ではあるが、こいつは布だ。おまけに輝く星達は…安っぽい作り物の様だ。」

俺は試しにそれに向かって腕を伸ばした。
空の一番低い部分が指先に触れた。
それは手触りの良い、上質なベルベットだった。

「あっ!流れ星!」

エドガーが、大はしゃぎで空を指差す。
ベルベットを伝うように転がる星は、光の筋を残し、“彼女”の足元に落ちた。

「うわぁ、綺麗!これってまるでダイヤみたい!」

足元の流れ星を拾い、僅かな星明かりにそいつを翳しながら片目を瞑り、幾千もの光の屈折を覗き込んでいるエドガーの、美しい横顔…。

「…っ…痛っ!」

俺の胸が、突然痛んだ。

(ただアイツの顔を見てただけなのに…何で胸が痛むんだ?)

「ねぇ、ロニィ、ここって意外と楽しい所かも!」

胸を抑え、腰を屈めている俺を振り返り、エドガーは、大輪の花の様な笑顔を俺に向けた。