(ヤバい…完全に雰囲気に飲まれた…。)

俺は沈黙の後、口を開いた。

「…毎晩あんな風に苦しむのか?」

「うん。この10年間…僕はあの痛みと付き合っているんだよ。…でも、もう慣れたよ。」

「慣れたって?そんな風には見えなかったけどな。」

「なぁに?ロニィ、僕の事を心配してくれるの?さっきまでは酷い事を言ってたくせに。」

エドガーがニヤニヤと意地の悪い微笑みを浮かべ、窓際で夜風にあたっていた俺に近づいて来た。

「ねぇ…ロニィ。僕の事嫌い?」

甘い誘惑の吐息…白い指先が俺の胸元をなぞる。

「…好きも嫌いも…。悪いが昼と夜のギャップが大きすぎて…俺にはまだ何の感情も…。」

エドガーに上着を脱がされ、上半身を剥き出しにされているにも関わらず、俺は自分でも不思議な位冷静だった。

「それでもいいよ。ただ…抱きしめてくれるだけで構わないから…。」

エドガーが、俺の胸に頬を寄せて懇願する。
俺は、奴の寂しげな横顔を見下ろして、溜息をついた。



「は~い、そこまで!折角のムードをぶち壊してすまんが、国王様のお出ましだぜ。」

突然、頭上から降ってきたレオルドの声に、俺達は驚き、天井を見上げた。

「レオルド、お前…この部屋に何を仕掛けた!」

俺は、今までの一部始終を奴に見られた悔しさに、真っ赤になりながら怒鳴った。

「まあまあ…そう怒るなよ。仕掛けは簡単。お前達のリングに細工をさせて貰った。」

「あっ、クソッ!」

「おっと、そいつは全ての課題を終わらせるまで外せない仕組みになっているからな。ご愁傷様!」