「エドガー、何処だっ!」


(あのヤロー、もう許さねぇ!ベラベラと知ったような口を叩いた挙げ句、公衆の面前で俺をぶっ飛ばしやがった!)

ギリギリと歯ぎしりしながら、俺は奴の部屋のドアを開けた。


「エドガー!」

奴はベッドに腰掛け、窓の外をぼんやりと見つめていた。
突然の怒声に、ピクリと体を強ばらせ俺の顔に怯えた視線を走らせた。

「ロニィ…僕…。」

エドガーが何かを言おうと口を開いた時…夕日が一筋の残光を残して、地平線に沈んだ。

「あぁ…痛い…。」

エドガーが、苦しげに呻きながら床にうずくまった。

「おい!エドガー、どうした?大丈夫か?」

エドガーのあまりの苦しみ様に、俺は怒りを忘れ、奴に駆け寄り抱き起こそうとした。


「ダメ!ロニィ、側に来ないで…僕を見ないで!」

エドガーは、切れ切れにそう言いながら、幻を掴む様に、空中に腕を伸ばした。

(これが…呪いの正体なのか…。)

奴の腕が、徐々にしなやかに伸び変化していく。
あどけない少年の顔が、妖艶な娘の顔に変わる。
さっきまでは、俺の胸の中にスッポリと収まる程小さかった体は、今は…。


「ねぇ、いつまで見てるの?もう…ロニィのエッチ。」


(はぁ?)

俺は、エドガーの一言で、現実に引き戻された。

「うわっ、そうか、もう日没だったな。タイミングが悪すぎたな。」

もう何に対して腹をたてていたのか…それすら分からなくなっていた。
とにかく、この部屋から一刻も早く退散しなければ!

「…じゃあ…俺、行くわ。」

「慌てることないよ。ゆっくりしていきなよ。僕達、一応結婚前提の付き合いだし。」

さっきは人のことをスケベ呼ばわりしたくせに、エドガーは薄いネグリジェに着替え、ベッドに身を委ねニコニコと微笑んでいる。