「レオルド、ロニィ、待って!」

俺達は、背後から聞こえる弾んだ声に呼び止められ、同時に振り向いた。

「お疲れ~。占星術の講義はどうだった?」

俺のローブの端を掴み、息を弾ませているソフィーの肩を抱き、俺は彼女の黒い宝石のような瞳を覗き込んだ。

「うーん…ちょっと退屈だったかなぁ。あーぁ…私はどうして男の子に生まれなかったのかしら。そうしたら、貴方達と同じ様に魔道を極める講義が受けられたのに!魔女の講義は退屈でたまらないわ。」

ソフィーは大袈裟に溜息をつくと、豊かな巻き毛がフワリと揺れ、鈴蘭の香水の香りが漂った。


ロニィがフイと顔を背ける…。


(ロニィの奴、その態度…ソフィーに惚れてますってのがバレバレじゃないか。)

「ソフィーの跳ねっ返りには呆れるな。なぁ、ロニィ、そう思わないか?」

俺は、意地悪く奴に同意を求めた。

「ああ…。そうだな。」

ロニィは、不機嫌そうな表情で、ぶっきらぼうに答えた。

「2人とも失礼しちゃうわね。でも…ロニィ、今日の貴方は何だか変ね。」

ソフィーは怪訝そうな表情を浮かべ、ロニィの顔を覗き込んだ。

「なっ、何でもねぇよ!今日の講義も終わったし、俺は帰るよ。」

ロニィは、きびすを返しながら手を振ると、足早に去っていった。

(ロニィのバカ!あれで気を利かせているつもりかよ!俺はもっと…)

「レオルド?」

「さぁて、邪魔者は消えた。俺達も帰ろう。」

俺は気持ちを切り替え、ソフィーの手を取った。
彼女は艶やかに微笑むと、コクリと頷いた。