「ロニィ…。」

意外な反応だった。俺の怒りを目の当たりにして、エドガーは唇をギュッと噛みしめ、両手を強く握り締めたまま項垂れた。

「ロニィごめん。でも、君ならボクを愛してくれるかもって、そう思ったんだ。人を愛せない君が、愛に飢えているボクを愛してくれる…そんな奇跡が起きるかもしれないって、そう思ったんだよ。ボクは!」

涙?あの憎ったらしいエドガーの瞳に涙が浮かんでいた。


(そうか…こいつも苦しんでいるんだったな。俺も頭に血が上りすぎて冷静な判断が出来なくなっていたな。)

「もう泣くな。今のは俺も言い過ぎた。さっきもアホ親父に言ったことだが、要するに国王の課題をクリアして、なおかつお前の呪いを解けばいいんだろ?こうなりゃヤケクソ!とことんつき合ってやるよ。」

気が付けば俺の口がとんでもないことを口走っていた。 いたずら者の精霊に呪詛でもかけられたか…。


(ああ…俺ってバカ。)
仕方がないよな。今のエドガーは滅茶苦茶いい女なんだからさ…。

そんな女を泣かせるのも気が引ける。仕方がないさ。

「ロニィ!ありがと!嬉しい!」

エドガーは涙で濡れた顔を上げ、頬を薔薇色に輝かせると思い切り俺に抱きついた。

「ちょっ…ちょっと待て~。エドガー、離せ!離せったら!」

忘れてた…奴は怪力の持ち主だったんだは奴に押し倒された。

「エド…ガー苦しいちょっと力緩めて。」
「あっごめん。痛かったよね?ホントごめん。…でね…あのさ…今夜はボクここで寝てもいい?」

(は?)

エドガーのキラキラと輝く緑の瞳が俺の視線を捕らえて離さない。

「仕方ないな…。だが、一言言わせてくれ、今夜はゆっくり眠らせてくれないか?俺に触れるな、何もするな!いいな?」

俺の必死の懇願を聞き、エドガーは腕の力を緩めた。そして、ニコリと微笑んだ。

「了解!」

そう答えると、奴は俺のベッドに潜り込み…程なく静かな寝息を立て始めた。
その寝顔を見つめながら俺は生涯特大とも言える大きな溜息をついた。