エドガーの必死の懇願に、レオルドは困惑し、肩を竦めると空を仰いだ。


「…エドガー、ロニィを生き返らせろって…いくら何でも無茶だ。魂が肉体を離れてから随分時間が経過してるんだぞ。せめて…。」


(せめて、奴がこの世にいた証…天界とここを結ぶものがあれば…。)

そう言いかけて、レオルドはエドガーの顔を見つめた。
その目が、彼女の額の上でピタリと止まった。
彼女の額に、蝶の鱗粉のような輝きが僅かに残っているのを見つけ、彼は口元に笑みを浮かべた。


「エドガー、もう一度聞くが…願いを変える気はないんだな?」

「うん!」


「しょうがねぇな…エドガー、“ダメもと”だが…コイツに賭けてみるか。失敗しても恨みっこ無しだぞ!」

レオルドは、そう言うと頬に流れ落ちる髪を首の後ろで束ね、ローブを脱ぎ捨てるとロニィを抱くエドガーの傍らに跪いた。
そして、右手を彼女の額に、左手をロニィの左胸に翳した。

「命を司る神エドナよ…我ここに願う。ロナルド・シーブリースの魂をこの冷たき器に呼び戻すことを…。」


レオルドの全魔力がエドガーとロニィの身体に注がれる。


「…ロニィ…帰って来い!」

エドガーの額から、頼りなげな小さな光がフワリと飛び出し、それはレオルドの身体を抜け、ロニィの動かぬ心臓に溶け込んでいった。

レオルドの詠唱が終わり、静寂が三人を包み込んだ。