「ハァ…ハァ…。ロニィ、やったよ!僕達、とうとうあいつをやっつけたよ!」

エドガーが、息を弾ませ後ろを振り返る。

「ロニィ!」

彼女は驚き周囲を見渡した。そこには、先程迄彼女を支え励まし続けた漆黒の魔導師の姿はなく、薄暗い闇が何処までも続いていた。


「…エドガー、魔術師の祝福を受けられるのは一度きりなんだ…。」

「…。」

「ロニィは、約束通りお前を守り天へ帰った…。」

レオルドは、エドガーの固く強張った指から氷の剣を外しながら小さな声で囁いた。

「ロニィ…。」

彼女の手からレオルドの手に渡った氷の剣は、徐々に輝きを失い黒い石の剣に変わった。

「氷の剣が…。」

「これで魂の封印が終わった。後は…。」

エドガーを右手で制し、レオルドは花崗岩の棺に近寄るとパチンと指を鳴らした。


ゴゴゴッ

鈍い音を立てて棺の厚い石の蓋が開いた。


「あっ…。」

中を覗いたエドガーの口から驚きの声が漏れる。
棺の中には、色褪せた魔女の装束を身にまとった女性の白骨が横たわっていた。