『ふふふ…まだまだだな!』

スルトは余裕の笑い声を上げながら、身体の周りに結界を張り巡らし、エドガーの剣を押し戻す。


ズズッ…ズズズッ


強い力に押し返され、剣を握るエドガーの腕がブルブルと震えだした。
持ち前の怪力で再び剣を押し戻すが、徐々に腕の力が萎えてゆくのが自分でもわかる。


(痛っ、指から痛みが全身に広がって…このままじゃ完全に力負けだ…折角のレオルドの魔法が台無しになっちゃうよ…。)


ついにエドガーは、石の床に膝をついた。


『他愛のない…。聖女の加護をもってしても、お前の力はその程度か?』

スルトの嘲笑が頭上に響き、エドガーはギリギリと切歯した。

「まっ、まだだ…僕はお前なんかに負けない。だって、ロニィに誓ったんだから!絶対に諦めるもんか!」


エドガーは立ち上がると、再び突き出した剣の柄を強く握りしめた。


「…!」


彼女の手に、背後から何者かの手がそっと重ねられた。
暖かな吐息が首筋を擽り、エドガーの身体に熱い血が駆け巡る。


“エドガー、大丈夫だ。落ち着いてゆけ。”

「ロニィ!」

“ったく…呼ぶのが遅せぇんだよ。待ちくたびれたぜ。いいか、エドガー…力を抜くな、剣に全神経を集中しろ!”


白銀の戦乙女の背後に、漆黒の魔導師の姿が浮かび上がった。