ビュウゥゥゥゥッ

神殿の外は、酷い吹雪だった。
血に染まった石畳に横たわるロニィの身体にも雪が積もり、濡れた黒髪は凍てつき、暗い空を見つめる虚ろな瞳には薄氷が張り、目尻を流れた水滴はまるで涙のような筋を描き彼の冷えた頬で固まっていた。


シュウゥゥゥン

彼の亡骸の側の空間がユラリと歪んだ。


そこに現れたのは、金糸で装飾された長い純白のローブに宝玉の付いた胸飾り、紫檀のロッドを持ち額に魔鉱石のサークレットを印した国王レオルドだった。
彼は、ロニィの傍らに屈み彼の身体に積もった雪を丁寧に払い、見開かれたままの瞼を静かに閉じた。


(ロニィ、お前の気持ちはしっかり受け取った。今度は俺が…お前の遺志に酬いる番だ。エドガーは必ず守る。そして彼女の願いを見届けよう。)


レオルドは、皮のコートを引き上げロニィの身体をスッポリと覆った。


(ロニィ…いや、ロナルド・シーブリース…もしも、この戦いで俺がくたばった時には…来世で再び友として巡り会おう。)


レオルドは静かに立ち上がると、ロニィに黙礼した後、神殿に向かい歩き出した。


オオォォン…オオォォン

暗い薄闇の奥から、不気味な雄叫びが聞こえてくる。
彼は美しい眉根を寄せ、表情を引き締めると靴音を響かせ、長い通路を駆けて行った。