よっちゃんが時々みせる。寂しそうな表情。
なつみは、気づき始めていた。

でも……いつもと変わらず、明るく振る舞う。
昔からいつもそう。
よっちゃんは、自分の事は決して話さない。
でも、それがよっちゃんだから。

「よっちゃん、今日お泊りするよね?その荷物は」
分かってはいたけど一応、確認する為に聞いた。

「よっちゃん、泊まるの?」
リエも気づかないふりをして聞く。

「お二人さんの、手伝いに来たつもりだから何でも言って」

「なつ!何でも手伝うって!」

リエは、何か考えがあるような、にやけた表情で言う。

私は、あかりちゃんの事がずっと気になっている。
会いに行く暇もなく、こっちに来てしまったから。病院にまだ通ってるのかな。
抱きしめて、声をかけてあげたい。
少しでも、あかりちゃんの心を救ってあげたい。
そう思っていた。

「じゃ、よっちゃん。荷物の整理をして掃除しておいてくれる?」

「ちょっと、コウちゃんに電話してくるから」

私はコウちゃんに電話をかけることにした。

少しずつ虫も鳴き始め、季節は夏を迎えようとしていた。

「もしもし?コウちゃん?」

「なつ、どうしたの?」

「あかりちゃん、元気かな?また会いたいんだ」

「うん、元気だよ。あかりに言っておこうか?」

「もう少ししたら、必ず会いに行くって伝えて」

「わかった。なつも大丈夫?」

「大丈夫だよ。心配しないで」

しばらく世間話をして、あかりちゃんの事は、また連絡してくれる事になり、電話を切った。

悲しい事を乗り越えるのはつらくて、心がどうにかなってしまいそうになる。
だからこそ、ずっと見ているだけもできなかった。
一緒に乗り越える事が出来るような気もしていた。

楽しい事だけを考えて生きていければいいのに……。