その話をしているときが、
一番楽しそうだった。
まあ、おれはくだらない夢だと思ったけど。

だって、本なんて読んでも意味が無いだろう?
何かが学べるわけでもないし、
学べたとしてもそれはきっと意味の無いこと。
感動して涙流しているやつなんかもいるけどさ、
それって誰かの作り話だぜ?
もちろん、中にはリアルの話もあるかも知れない。
それならさ、涙を流す前に、その恵まれない人へ
手助けするために走り出すのが当然じゃねぇか?

グタグタ言ってて体動かさないやつくらい、
無駄で不要なやつはいない。
いや、むしろそれは害悪なんじゃねえか?

まあ、常々おれはそう思ってたんだけどさ、
やっぱ、そんな夢見がちなあいつの前で、
口にすることはなかったよな。

いや、実は何度かあった。
おれは本をぶつけられて、
あいつはおれの部屋から出て行った。

おれたちはそんなふうに毎日を過ごしていた。
いまはもうお互いの記憶の中にしかない、
傍にあいつのいた日々。

それは肌寒く、外に出るのが嫌になるような
週末の薄暗い夕方だった。

まあ、あれもおれが悪かったんだろうな。
よく分からないけど、これまでも、
分からないときは大抵おれが悪かったからな。

つまり、おれたちはいつものように大喧嘩をした。

そこで、おれは仲直りしたくて、
珍しく飯を作ったんだ。

だって、先週はあいつの誕生日だったからさ。
あいつはその日、なんだか用事があったらしいから、
それなら今日祝ってやりたくなったんだよ。

それで、ご馳走を作ってさ、
ゴメンなんて言ってさ、
花束でも渡しておけば、
あいつはきっとまた喜ぶさ。

そう、あいつは喜ぶんだ。

そう、あの、雨の日もそうだった。