「図書館のような家を建てることが夢なの」

くだらねぇ。そう思ったけど黙ってた。

「それはどんな家なんだ?」

「部屋にステキな本がたくさんあるの。
一生かかっても読めないくらい。
ああ、まだ読みたいなって思いながら、
おばあちゃんになって、死んじゃうくらい、
面白い本やステキな本が、
溢れるくらいにたくさんあるの」

「その図書館には、
おれのマージャンの本なんかも入ってるのか?」

「そんな下品な本はありません」

「じゃあ、マンガだけでもおいてくれよ」

「いやよ。あなたも本を読めばいいのに」

あいつはよくその図書館の話をした。
細かいディテールをおれが憶えてしまうほど。

「この部屋と同じサイズの部屋が7つあってね。
すべての壁が本棚になってるの。
最初の部屋は私の好きな近代小説の部屋。
次の部屋はちょと昔の文豪ね。
やっぱり連綿と読み継がれてきた本には
それだけの価値があると思うの。
その次の部屋は学びの部屋。
歴史についてや思想、哲学の本を置きたいわ。
ドキュメンタリーの部屋を忘れていたわね。
世界中で、今もなお戦争や差別、そして貧困、
もっと悲惨な事件がおこっているのを知ってる?
そういう真実に目を向けたものを特に置きたいわ。
次の部屋は海外文学かしら。
古今のイギリス文学を網羅するの。
フランス語も読めればいいんだけど。
アメリカの本は底が浅いし。
それで、次の部屋は何にしようかな……」