あいつはおれのことをもっと聞きたがった。
おれは流れが変わったことに気付いた。
いつの間にか革命が起こったことを知った。
おれの3は今や最強のカードだった。

おれはわざとつまらなそうに、
自分について、あいつに喋った。

「5年前に父さんが死んだんだ……」

「だから苦労したわけじゃない……」

「母さんは会社のことなんてわからないしね……」

「そんなこと無いよ。大学よりも楽しいよ。きっと……」

「いいよ。今度、おれの店に……」

このとき話したことは、確かに嘘だ。

「嘘は良くないわ」

うん、あいつはそう言うだろう。
でも、あいつだって嘘をついたことがないなんて、
口が裂けたって言えないだろう?

石を投げることができるのは、
罪を犯したことの無い者だけじゃないのか?

世の中のほとんどの人間が
大なり小なり嘘をついてるこの世の中じゃ
他人の嘘を責めることなんてできやしないんだ。

あいつにそれを伝えたかった。
もちろん伝えることはできなかったけれど。

それに、あいつが散々指摘したように、
おれは大嘘つきなわけじゃない。

ほとんどのことが本当だ。