「ありがとう」

「いや、礼なんていいさ。
おれが好きでつくったんだからな。
いつ来るんだよ。いつでもいいぜ」

「行けないわ」

「……」

「夢の図書館をつくってくれてありがとう。
でも、私は行けないわ。
母から聞いたと思うけど、私はもう結婚してるの。
子供だっているし、手の離せない時期だし。
そんな私が、あなたに会うのって、
何か正しくないことな気がするの」

「……」

「あなたが本を読むようになって嬉しいわ。
図書館の本を大切にね」

そう言って、あいつは電話を切った。

おれは電話を手に持って、
何も考えず、何も考えられず、
そのままそこで、少し眠った。