おれは図書館に帰り、
ビールを空け、
少し時間が経ってから、
心を決めて、
あいつに電話したんだ。

しばらく、コール音が鳴り響く。
それが7度目のことだったかな。
おれには5分くらいに感じたが、
そのだいたい7度目のコールであいつが出た。

「久しぶり」

「あら、久しぶりね。さっき母から電話があったわ。
あなたに私の実家、教えたかしら」

「そんなことよりもさ、
おまえの夢について話したくて電話したんだ」

「何のこと?」

「ずっと言ってたじゃねえか。図書館を作りたいって。
そしてそこで住みたいって」

「言ってたわね。なつかしいわ」

「作ったんだよ。おまえの言うとおりの図書館だ。
ほら、最初の部屋が近代小説で、
次の部屋が昔の文豪。学ぶための本に、
洋書だってある」

おれは一気にまくしたてた。

「結婚したんだってな。おめでとう。
でも、それはそれで、これはこれだ。
おまえの夢はここにある。
一度ぜひ見にきなよ。
絶対に気に入る自信があるぜ」

「何を言ってるの?」

よく分かっていないみたいだ。
仕方ない。突然だもんな。

「だからさ、おまえの言ってた図書館を、
おれが、おれが作ったんだよ。
もちろん、全ての本をおれも読んだよ。
昔のおれは本を読まなかった。
でも、今は違う。おれは、誰よりもおれは本を読む」

「私の言ってた図書館を、
あなたが代わりにつくったってわけ?」

「そうなんだ。おまえが言ってた図書館を
おれが代わりにつくったんだ」

なぜかあいつは黙ってしまった。
感動しているのだろうとおれは思った。
だって、夢がかなった瞬間だからな。
そして、おれの夢がかなった瞬間でもある。