おれはその日、本を二箱買った。

一日も早くあいつを迎えにいくんだ。

家に帰ったおれは、
いつものように本を開いた。

でも、それだけじゃいけない気もしていた。

あいつが帰ってきたときに、
おれがあいつを満足させられる料理が作れるように、
おれはときどき、自分で料理をするようになった。

そして、あいつが気に入りそうな食器を買った。

あいつが気に入りそうな本棚に買い換えた。

あいつが気に入りそうな机を買った。

あいつが気に入りそうな内装にした。

金はかかったし、
ただでさえ一冊でも多く、
早く本を読みたかったおれには、
時間がもったいなくも感じたけれど、
でも、あいつのことを考えながら、
あいつの好きなものを探すことは、
何よりも楽しい時間だった。

図書館は完成に近づいた。

あいつのための本。
あいつのためのソファー。
あいつのための料理と食器。
あいつのための……

そして170回目に買った本で、
図書館の本棚は一杯になった。