マスターの話はこうだった。

あいつはあの後、元彼の家に行ったらしい。
ほら、あの洒落た居酒屋の前で、
大喧嘩していた相手だよ。

おれは本を読まず、感性が合わず、
おれと一緒に何をしてもつまらなかったと。

彼女はマスターにはそう言ったそう。

前の彼氏は出版社勤務で校正の担当者。
おれとくらべりゃずっと本も読むだろうし、
感性も合う野郎なんだろう。

一緒に店に来ることは無いが、
楽しくやってるようだとマスターは言った。

おれはその話を聞いて……

金も払わずに店を出て、
家に帰っておれは眠った。

目が覚めて、マスターの話、
彼女が話したという言葉を思い出し、
また、少し泣いて、少し眠った。