後から見ると、それはクッションだったらしい。
でも、突然ぶつけれたおれからしたら、
それは墓石をぶつけられた以上に驚きだった。

驚いているおれに、
あいつはまた何かを投げた。

次は何だったんだろう?
わからないけど、硬くてとても痛かった。

おれは言った。

「ごめんよ。昨夜はひどい事を言っちまった。
ごめんよ、許してくれよ。晩飯もできてる。
これまでで一番がんばって作ったんだ。
おまえの誕生日が過ぎちゃっただろ。
祝ってやろうと思って、
おれは、がんばって作ったんだ」

でも、あいつは何も答えなかった。
涙も流していなかった。
おれよりずっと背の低いあいつが、
上目遣いでおれを見下していることが、
おれには一目で分かったんだ。

「どうしたんだよ。
なんでそんなにも怒っているんだ。
おれが悪かったよ。
今夜はおまえの言うことなら、
何でも聞いてやるからさ。
頼むから機嫌を直してくれよ」

でも、あいつは答えない。

おれはだんだんイライラしてきた。
こんなことは初めてだった。

おれは座って、静かにタバコに火をつけた。