甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい

その日の午後13時少し前だっただろうか。

買ってきた菓子パンで簡単にお昼をとった私は足早で販売部のフロアに戻った。

あまりに甘ったるい菓子パンを選んでしまった自分に半分後悔しながら。

フロアに入ると、見慣れない背の高い男性が落ち着かない様子であたりを見回している。

まさか、この男性が例のかっこつけイケメンデザイナーとか?

それにしても、販売課の席には人っ子一人いない。

皆、お昼ご飯で出払ってしまったのか、直美すら姿が見えなかった。

おいおい、揃いも揃って皆席を外すなんて一体どうなってるわけ?

あんまり気が進まないけれど、困っていそうなその男性の背中に声をかけてみる。

「販売課と本日お約束されている方でしょうか?」

その男性はすぐに私の方に顔を向けた。

……え。

彼はようやく声をかけてもらえた安心感からか、私を見るなり満面の笑みで頭を下げると言った。

「失礼しました。間宮デザインの間宮樹です。約束の時間よりも早めについてしまったようで、とりあえず受付の方にこちらまで案内してもらいました」

「あ、はい」

やっぱり彼が例の彼なんだ。
そう納得しながらも、その間宮樹から目を離すことができずそう答えるのが精一杯だった。

だって、間宮さんという人が今までお目にかかったことがないくらいに整った美しい顔をしていたから。

前髪はふわっと上げられ、知性の感じられる額を惜しみなく露わにしていた。

形のいい眉と涼しげな切れ長の目元が私を優しく見つめ微笑んでいる。

それは最近読んだ小説に登場する美青年そのものだった。

こんな男性、本当に存在するんだ。

想像以上の彼を見上げたままごくりと唾を飲み込む。