甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい

直美は私の耳元に顔を近づけて小さな声で言った。

「今日間宮デザインのデザイナーが販売課に打ち合わせに来るの」

「間宮デザイン?」

さっき、上田さんたちが話していたことだ。

「そのデザイナーが、ものすごいイケメンなんだって言うから、ちょっとね。おしゃれしてみたんだ。その打ち合わせに私も同席していいらしくって」

「イケメンねぇ」

かっこつけの社長の息子のことよね。

自分のお茶を八分目ほどコップに注ぎ入れた。

「このフロアの奥の会議室で打ち合わせらしいから、凛ちゃんもきっと見れるわよ」

「興味ないけどね。その情報は頭の片隅に入れとくわ」

「凛ちゃんは相変わらず冷めてるのねぇ。25歳なんだったら恋に恋する年齢でしょうが」

同じ年の直美が先輩面して言うのがおかしくてプッと吹き出すと、直美に手を振りながら給湯室を後にした。

恋ね。

最近も「つまらない女」って吐き捨てられたことは、まだだれにも言ってない。

ていうか、情けなくて誰にも言えなかった。

今回のダメージは予想以上にひどくて、これから先も素敵な恋なんてできないかもしれないって思っている。

もう男なんて懲り懲り。


つまらない女=私。

つまらない女で生きてきた私には自分のどこがつまらないのかすらよくわからないから。

席に座ると、もってきたシュシュで髪を後ろで一つに束ね、会計ソフトを立ち上げた。