「あの、今から無茶な依頼しても受け付けてもらえますか?」

恐る恐る尋ねてみる。

「ええ、まだ時間的には大丈夫ですよ。無茶な依頼というのをまずは聞かせてもらえますか?」

低音の彼の声はどことなく懐かしいようなとても心地のいい声。

私は大事な封筒を紛失してしまった経緯を伝えた。

「そうですか、それは大変ですね。朝までに見つかれば問題ありませんよ。きっと大丈夫です。一緒に探しましょう」

彼に大丈夫と言われたら不思議と大丈夫な気がした。

一人じゃない安心感。

何でも屋さんなんて、と聞いた時は思ったけど使う人が多い理由がなんとなくわかったような気がした。

「とりあえず手分して情報が入るようにしましょう。その前に、必要事項としてお名前とご連絡先を教えていただけますか?」

男性は冷静に私に確認する。

そうだった。慌てて電話で連絡とったものの、まだ自分の名前すら名乗っていなかった。

確か、最近もそんなことがあったような……。

「名乗りもせずすみません!あの、私は広瀬凛と言います。で、連絡先は……」

「はい、わかりました。広瀬、さんですね?」

「はい」

「失くされた封筒の宛先と送り主はどちらになっていますか?」

「えっと、宛先は」

なぜだかドキドキする。その名前を口にするだけなのに。

「宛先は、間宮デザイン 間宮樹様。それから送り主はTAWAKI食品販売です」

「えー……TAWAKI食品販売?」

「はい、そうですが?」

電話の向こうの男性が口ごもる。何か、気になることでもあったんだろうか。

「TAWAKI食品販売の広瀬さん?」

突然、彼が私に尋ねてきた。