甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい

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あれから弥生は図書館にぱったり姿を見せなくなった。

寂しかったけど、そういうこともしょうがないと必死に言い聞かせながら、私は今まで以上に勉強に没頭していたっけ。

それからしばらく経った日曜日。

弥生の姿がそこにあった。

目が合った私は思わずその場から離れようとした。

「凛!待って!」

その手を彼女はぎゅっと強く握りしめる。

あなたには本当のこと話したいのって泣きそうな目で私を見つめる弥生にドキドキしながら頷いた。


図書館の脇にある大きなクスノキの下のベンチで、私は弥生から初めてその事実を聞く。

その全てが私もそしてきっと他の誰も知らないこと。

普段の明るい弥生からは想像もできない内容だった。

弥生には母親がいなかった。弥生がまだ三歳の頃、理由も告げず出ていったらしい。

その後は運送会社に勤める父親と二人で暮らしていた。

父親が帰ってくるのはいつも0時を回ってから。その間、弥生は学校から帰ると一人で家事の全てをこなす。

時には部活でへとへとになって食事を作るのも億劫な時もあったけど、大好きな父親が仕事を頑張ってくれてるんだからってなんとか自分を奮い立たせてこなしていた。

そして高校二年の冬。

いつもならとうに起きている時間に、父親は起きてこない。

心配になって父親の寝室に向かうと、父はうつぶせになって布団の横に倒れていた。