甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい

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弥生はカクテルをぐっと飲み干し、カウンターに置いた。

「そうそう、そんなことあったわね。アイス事件」

「アイス事件って」

私は苦笑しながら、運ばれてきた『砂漠の荒野』という豆腐料理をつまむ。

「だけど、あの時ほど胸が張り裂けそうなほどにつらい気持ちになったことはなかったわ」

弥生は右手薬指にはめたシルバーリングをさすりながら遠い目をした。

「あの日の一か月後だったっけ、初めて私は凛の前で大きな声で泣いたのよね」

「うん、そうだった」

「あの日にわかったの。凛なら本当の自分をさらけ出したって受け入れてくれるって。動物的な勘だったのかな。私の笑顔が表面的なものでしかすぎないって、もう既にばれてるような気がして」

弥生は私に「生中で頼んでいい?」と尋ねると、マスターに指を二本立てて「生中」と声をかけた。

「ばれてたっていうか、うっすら弥生には裏があるような気がしてたかも」

「悪い言い方ね」

弥生は笑いながら私の肩を軽く押す。

「でも、凛に出会えて本当によかったってそれはずっと思ってる」

「私も」

運ばれてきた生中で、もう一度乾杯した。