甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい

「はい、とれました」

「そう、おめでとう。よくがんばったわね」

目を合わせた父に窘められるように母は寂しそうに微笑み頷く。

父と母はきっと次に私を迎える時には、私を認めてやろうって思ってたに違いない。

父の言葉や、ようやく落ち着いた物腰で私を見つめる母からそう感じていた。

今なら、受け入れてくれるかもしれない。

こんなわがままな私を。

「私、来月一杯で会社を辞めてトリマーになろうと思う」

「トリマーったって、今から始めるんじゃなかなか独り立ちは難しいんじゃないかい?そんな焦って会社を辞めなくたって」

父が優しく尋ねる。

「最近わかったの。私は皆に懐かないやっかいな犬ほど相性がいいって」

「ほう?」

父は母と顔を見合わせて少し驚いた顔をした。

「きっと私自信がやっかいなタイプだから、犬も同志だと思うんじゃないかしら」

私は首をすくめて笑うとまた視線を落とす。

「だから、そういう他のトリマーに受け入れられない犬たちをきれいにしてあげたいなって思ってる」

「それは頼もしいわね」

母がようやく私に返した言葉。

思いがけない母の言葉に目を丸くしてその目を見つめ返した。

頼もしいって、『いい』ってこと?

「うん、凛の目の付け所はとてもおもしろいと思うよ」

父も母のそんな様子にようやく安心したような表情で頷いた。

「凛」

母が再び私の名前を呼ぶ。