甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい

穏やかな風に吹かれた緑が優しい。

朝は少し曇っていた空も、そのうち雲間が広がり青空が顔を出していた。

少し開けた場所に出ると、彼は駐車場らしきところに車を停める。

「ついたよ」

車の外に出ると、爽やかな風が頬を撫でる。

初夏だというのに、都会とは違い随分と涼しかった。

既に何かを目指して歩いていく人達の姿が見える。

間宮さんは私の手を握ると、その流れに沿って歩き始めた。

なだらかな丘が前方に広がり、その向こうには……言葉を呑み込むほどに大きな木が聳え立っていた。

木の前にはウッドデッキが渡してあり、そのデッキから人々がその木を見上げている。

でも、目の錯覚と思うくらいに人が米粒のように小さく見えた。

それはだんだんと私に近づいてくる。

目の前に立つと、見たこともない巨樹に圧倒され、思わず足がすくんだ。

「すごいだろう?これは関東最大のクスノキなんだ。樹齢は千年以上と推定されてるらしい」

千年?!

そばに近づくのも恐れ多いくらいの見えない何かが巨樹から沸き立っているような気がした。

ウッドデッキに上がると、木に手が触れられそうになるところまで近づく。ゆっくりとその幹から伸び上がった枝葉を見上げた。

木の先端は随分と遠くに見え、生い茂った葉が私達を呑み込まんばかりに覆い被さってくるようだった。

そして、その幹の太さは視界に収まりきらないくらい太くて二本の木が合体しているようにも見える。

日当たりのよい丘に立っているクスノキは、『そんなに驚かなくてもいいだろう?』と笑っているかのように悠然とそんな私を見降ろしていた。