「私、樹さんの家を離れますが、毎日ぷーすけの世話だけはちゃんとさせてもらいます。きっとぷーすけは私がいないとダメだから」

樹さんはこくんと頷く。

「あと、私、トリマーの資格を取ろうと思います。働きながら専門学校に通って。来年絶対資格を取ってトリマーになります」

「トリマー……確か安友さんが凛はトリマーに向いてると言ってたな」

「はい、私も安友さんに言われてからいろいろ調べて、考えて、トリマーになりたいって」

「うん、いいと思うよ。応援する」

「それで、もしトリマーの資格が取れたら……」

私は彼の横顔を見ていられなくなって正面に視線を戻した。

「もし、トリマーの資格が取れたら、……私を抱いて下さい」

「え?ど、どういうこと?」

樹さんは、驚いた顔をすると慌ててハンドルを切り路肩に車を停めた。

とうとう、言っちゃった!顔から火が出そうになってる。

両手で頬を押さえてうつ向く。

私にとって、きっとこれからもこんなに好きな人とは出会わないと思う。

だから、私の初めては樹さんがいい。

樹さんじゃないとダメだ。

今日、初めて樹さんとキスした時、彼とならって思っていた。
そんな風に思えたのも初めてで、自分がそんな気持ちになることを許せてしまう相手も樹さん以外いない。

これだから恋愛経験のない女は短絡的だなんて、弥生には笑われそうだけど。

「あの、凛。聞いてる?」

頭を掻きながら、樹さんは困ったような顔で私を見つめていた。

「はい、すみません。突然こんなこと」

「ほんと突然だな」

彼は苦笑しながらハンドルに腕をかける。