間宮さんはゆっくりと歩きながら私の手をぎゅっと握りしめ静かに言った。

「変じゃないよ。ちっとも」

まさかの返答に目を見開いて彼の顔を見上げる。

間宮さんは目を細めると続けた。

「広瀬さんはご両親にとても大切に育てられたんだね。だからこんなにも純粋で心がきれいなんだと思う。むしろ素敵だよ」

「……そんなことないです」

彼の優しい言葉に胸が苦しくなってうつ向く。

「ぷーすけが君だけにはどうしてか懐くのも、きっと君のその純粋さをわかっているからだよ。動物ってそういう本能を持ってるらしいよ。きっと広瀬さんには不思議な力があるんだ。あのジョンすらも君に服従してたって聞いた時は正直僕も驚いた」

「ジョン?」

ジョンってあの安友さんの家にいた賢いドーベルマン。

でもどうしてその話を知ってるの?

「広瀬さんは僕には敢えて言わなかったんだろうけれど、帰国してから安友さんから電話があってね。全部聞いたよ。一人で安友さんを助けに行ったって話」

「すみません!勝手なことしてしまって……」

あれほど、仕事の電話には出ちゃいけないって言われていたのに。

きっと間宮さんはあきれてるに違いない。

「そのきゃしゃな体に驚くほどの勇気が詰まってるんだね。それはきっと君のご両親からの愛と透き通った心に秘められてるんだって思う。安友さんもその勇気に感服していたよ」

彼は優しく笑った。