「そんな人にひっかかったりしないわ。だって、私はお母さんの娘だもの」

私の中では特別皮肉を込めたつもりだったけれど、母はすっかりその言葉に機嫌をよくしたようだった。

『まぁ、いいわ。今度帰ってきたらちゃんと話しましょう。あなたももうすぐ26になるんだから、そろそろ結婚を考えてもいい年頃だわ』

「今忙しいの。じゃまたね」

これ以上生産性の話はしたくなかった私は、さっさと話しを切り上げ電話を切った。


とりあえず母と父が元気なことはわかった。

私がそばにいなくても大丈夫。

私は、……変わるんだ。変わらなくちゃいけない。

なりたい自分に。

心の奥底に潜んでる自分の気持ちにもっと誠実に生きたい。

安友さんに向いてると言われたトリマーのこと、実はあれから少し調べている。

都内にある専門学校がよさそうだということ。そして、仕事をしながらでも資格が取れるということもわかっていた。

まだ誰にも言ってないけれど、自分が役に立てる可能性が少しでもあるなら挑戦してみようと思っている。

資格を取ったとしても自分の衝動が起こらなければトリマーにはならないだろう。

だけど、もしその世界に飛び込んでみたいと思ったときは迷わず飛び込むつもりだ。

自分で何かを決めてその場所に立ち向かうなんてこと恐ろしくてしたことなかったけれど、今はその勇気が嘘みたいに沸いていた。

これも、間宮さんと出会ってから。恋したら、なんだってできるような気持になってくるから不思議。

変わった自分を一番に間宮さんに見てもらいたい。