僕等の、赤。


 「誰の目にも留まらない、趣味で小説を書いているしがない田舎のババアに頼んでないで、自分で書けばいいじゃないですか。それに私は今仕事中です。暇じゃないんです」

 『まったくもう』と言いながら身体をパソコンの方へ向け、コーヒーを啜る。

 「どこがだよ。クッキー食いながらコーヒー飲んで、ネットニュース見てるじゃねぇか。ていうか、自分で出来たらとっくにそうしてます。出来ないから頼んでるんじゃないですか。さっき見たでしょう? 俺はパソコンを打つ事が出来ません。物を触る事も掴む事も出来ない」

 『ホラ』とパソコンのキーボードに置いた自称蒼汰の手が、またしてもキーボードどころかデスクまでも貫通した。

 「おぉ‼」

 何度見ても素直に驚く。