僕等の、赤。

 唇を尖らせながら、スマホの再生ボタンをタッチし、さっき撮った動画を見返す。

 「……ん? あれ? おかしい」

 その動画は、偽蒼汰の姿がないだけではなく、偽颯太の声も入ってなくて、ただ事務所の風景を撮りながら私が1人で奇声を上げているだけだった。

 「佐波野さん、声が消えるマジックって見たことありますか?」

 「……ない……です。ていうか、私は佐波野ではないんです。本当に」

 なんかもう、今起こっている事が全て気持ちが悪い。怖い。

 「うん、知ってる。本名は夏川さん。佐波野ミソノはPNでしょ。OLをしながらコツコツ小説を書いては度々コンテストに応募して、いつも最終で落ちちゃう」

 偽蒼汰が、ハッキリと私の秘め事を言葉にした。