僕等の、赤。

 「佐波野さん、俺の顔とか身体とかも撮ってみてください」

 偽蒼汰に言われた通り、偽蒼汰の顔にスマホを向けるが、やっぱり映らない。

 「すごいすごい‼ どうなってるの⁉ ていうか、なんでマジシャンがここにいるの? あ、流しですか?」

 肉眼では見えているのに、カメラを通すと見えなくなる偽蒼汰の不思議現象に、驚きと興奮と何より謎が深い。

 「流しって何? あ、あれか。昔の映画で見た気がする。路上パフォーマーのお店徘徊版か。芸見せてチップ貰うヤツでしょ?」

 「言っておくけど、私が生まれた時にも既に流しはいなかったからね。私の方が随分年上だろうけど、そこまで昔の人間じゃないからね」

 『流し』をかろうじて知っていた偽蒼汰に、必要以上におばさんに思われたくなくて、変な言い訳をしてみる。

 流しから路上パフォーマーへと、形態どころか響きまでカッコよくなるという時代の流れに、【こうしてどんどん変化して行って、どんどん歳も取って、そして死ぬのよ】と、諸行無常を痛感する。