目を覚ますと其処は…
自分の髪の毛を掴み、吊るすように持ち上げるあの人の姿が有った。
目の前では、『止めて!!その子を離して!』と、涙を散らして必死に叫ぶ母の姿が有った。
『お前がいけないんだ!!』
又、拳が振りかざされる。
最後、私は笑っていた。
頬に伝う雫を掻き消すように。

痛みに私は思わず目を閉じる。

次に目を開くと、其処は、学校の廊下だった。
『アイツ、今日休んでくれてラッキー!』
『だよね!』
『『あははははは!!』』
そう笑うのは、かつての友達だった筈の誰か。
その時も同じように私は微笑む。
その眼前の景色は霞んでいる。
そう、これはいつかの記憶ではない。
これは、いつかの友達から耳にした噂。
現実。
想像。

私はふと、瞬きをする。

すると、景色は変わり、七階建て程の大きさの茶色い煉瓦のマンション。
『早く歌いなさいよ!』
そう私に言うのはこのマンションでカーストが一番上の数才年上の女。
『そんなこともできないの!?
罰としてあそこまで『あー!』って、叫んで走りなさい!!』
そう指示され、言われるがままに私は叫んで走る。
『途切れていたからもう一度よ!!』
そう言われ、私は毎日これを繰り返し、痛みの走る喉を無理矢理使い、走る。

痛みに視界が液体で歪むも、私は笑う。

その視界がまともに見えるようになると、其処は、教室だった。
『マジキモいよねあいつー』
『ホントー!絵ばっか描いちゃってさぁー』
『アイツ又ボッチじゃん』
『そーゆーなら話しかければ良いだろ?』
『は?何であんな奴に俺が話しかけなきゃいけねーんだよ?』
『だよなぁー!俺も話しかけたくないし、クラス同じなだけで最悪ー!』
『俺なんか隣だから死にそう』
『マジか乙ーw』
そこらじゅうから私への悪口が聞こえる。
『また笑ってやがる』
『どうせアイツドMなんだろー?』
私は重い体を必死に使い、立ち上がろうとするも、ふらつき、吐いてしまう。
『うっわキモー』
『菌うつさないでよねー』
私は、そのまま、誰にも助けられる事は無かった。

そのまま私は、自分の汚い物で汚れた床に目を閉じ、倒れた。

目が覚めると其処は、雨の降る校庭だった。
目の前には男子。
更に横にはケタケタと笑う男子。
(そうか…目の前の彼と私は戦っていたんだ…)
『よーい!どんっ!』
『バシンッ!ドスッ!ゴスッ!』
鈍い音が体中に響く。
『てことで圧勝ー』
『ったりめーだろ』
そのまま放置され、私は雨の降る校庭に又、倒れる。

(まだ…強くなれないよ…
あの人に私は勝って、お母さんを守らないといけないのに…
人にあんな事にしても誰にも勝てないよ…
誰も…誰も…守れてないのに…)

そのまま私は、眠りに落ちた。