「.......おい、倉梨大丈夫か」






ぼーっとした意識の中に
声が響く。






「.......やっと起きたか!
起こすのもなんだが、もう下校時間でな」







私は、目を開けたその先に先生が
いることに驚いて思わず体を強ばる






「......えっと.......私.......?」




私はというものの
チャイムの音を聞いた
あの瞬間から先の記憶が無い。







「やっぱり、覚えてないか」

「.......!」





先生の後ろからカーテンをめくって
ひょいっと顔を出したのは






「.......瑞希くん...!?
どうしてここに.......?」




私は動揺してあたふたするも
瑞希くんはくすりと笑って



先生に
「後は俺にまかせて下さい」
なんて言って私と瑞希くんはあっという間に
二人きりになる。









保健室のベッドで横たわる私と
ゆっくりと腰をかける瑞希くんの間に




少しの気まずさと、
異様な空気が漂う。




何を話していいかもわからず
口を開かない私を見つめて







「.......覚えてない、か
割とショックかな」





瑞希くんは優しく私を見る。





「.......ごめんなさい......本当に何にも.......」




私は瑞希くんの目を見れないまま謝る。






「なんてね、冗談」




瑞希くんはやっぱり私に微笑む。






「.....本当に言いたかったのは

ごめん

って謝りに来た」



「え?」





思わず私はパッと瑞希くんの目を見る。






「.......やっと目合わせてくれた」

「あっ.......」




そんな瑞希くんの一言に思わず目を逸らす。






瑞希くんは少し気まずそうに






「俺のせいでハルと喧嘩した.....だろ?
だから謝らねーとって思って」





……瑞希くんのせい?




「ち、違うよ!」


私の大きな声で思わず瑞希くんも
びっくりしている。






「……あれは私が一方的に…」




そう。私がただ、ハルになんとも
思われてない事を知って。
気付いちゃってそれでーーーー






「私っ……ハルに酷いこと……っ」


私は気づけば目の奥が熱くなって
涙が頬を伝う。






「……ゆずちゃん……」


瑞希くんはそっと私を撫でる。






「……それだけゆずちゃんが
ハルの事が好きってこと……でしょ?」





瑞希くんは袖で私の涙をふく。






「ほら!」


……っ!!!!






私は不意に瑞希くんに両手で顔を掴まれる。







「……早くハルの所行きなよ、ね?」





瑞希くんはニコッと笑う。







「……ごめんっ…私っ……」




私は目の前に優しくて
未だに信じられないけど自分を
好きだと言ってくれる
瑞希くんがいるのにーーーーーー






「ハルに言わなきゃ……っ」


「うん!行ってらっしゃい」





ハルくんは私の腕をスルッと離す。




私はそうしてハルへと走り出した