ヴィンセントは居間のソファーに浅く座り、父親の帰りを待っていた。

 叱られる覚悟と、そして殴られる覚悟をして、目を瞑って動かずじっとしている。

 ベアトリスを守る、自分なら守れると言い切ったが、すぐに爆発し、関係のないものを傷つけるようでは偉そうに言えた義理はないとつくづく反省する。

 もう過ちは繰り返したくないと、父親にこてんぱんに肝に銘じてもらうつもりでいた。

 ヴィンセントなりに反省し、男らしくけじめをつけたかった。

 これもベアトリスを守りたい、愛するがゆえにひ弱な自分を捨てたい一心であった。

 しかしそう思うことも子供じみて甘ったるく弥縫策に過ぎない。

 まだこの時点では謝ることを軽く疎んじている。

「それにしても、遅い!」

 叱られることを待ち望むのも変な気がしたが、この気持ちのままでは落ち着かず、決めたことはさっさと方をつけたかった。

 待つことに痺れを切らし、足がカタカタと揺れ出した。

 頭を掻きながら、イライラしてきだしたが、これがいけないと、また無心になりじっとする。

 リチャードの車が家のドライブウェイに停まった気配がしたとき、いよいよかとヴィンセントは立ち上がり背筋を延ばした。

 そして玄関のドアを凝視していた。

 ドアが開いて、リチャードが入ってきた。

 ヴィンセントが視線を合わせた瞬間、電光石火のごとく飛んできた拳で後ろにぶっ倒れていた。

 リチャードは空が裂けるくらいの怒りを体に溜めて、鬼そのものになっていた。