汚れてみすぼらしさが漂う、あまり治安の良くない地域。

 こじんまりとした薄汚れた小さな家。

 寂れたレストランに、バーもあれば、タトゥーショップなど怪しげな雰囲気の店がごちゃまぜにメインストリートに沿って並んでいる。

 それらの家や店の窓に設置された鉄格子が、犯罪率の高さを警告していた。

 夜になれば一人で出歩くには危ない場所だと誰もが思う。

 そんな町の中をヴィンセントはズタズタのシャツのままで歩いていた。

 家とは全く反対方向。

 むしゃくしゃを抑えるためにはこういう場所がうってつけだった。

 感情が高ぶって何かを壊すことがあっても、それが似つかわしい場所だと思えた。

 またダークライト達のたまり場にもなるようなところだった。

 自らこういう場所にくるのはずっと避けていたはずだった。

 この時ヴィンセントは自己嫌悪と自暴自棄でいたたまれなくなく、自分を見失っていた。

 感情から力任せに学校を崩壊させてしまったことで、父親に酷く叱られるのが目に見えていた。

 まっすぐ家に帰れる気分にはならない。

 心の弱さを吐くほどに痛感する。

 そして父親から言われた言葉が改めてぐさりと突き刺ささり、どん底まで落ちて落ちて落ち続ける。