「そうなの、わかったわ。本気だったのね。本気で好きなんだ。だからジェニファーをベアトリスに近づけさせた。ベアトリスを憎み、嫉妬するものを間に入れればベアトリスを守っているシールドの力が分散されて、あなたをはじく力が弱まる。あのシールドはベアトリスを守るためにネガティブな心を持つものにも反応するからね。その時だけベアトリスに近づけたと言う訳ね」

 サラが真っ向から否定してこない言い方にヴィンセントも敵意が薄れた。

「ああ、その通りだ。幸いジェニファーは俺に気があった。だがいつも俺がベアトリスを見てたことに彼女は気付き、そして嫉妬が湧いた。ジェニファーはプライドが許せなかった。学校一の美貌をもつ自分よりも、ベアトリスに心奪われる俺がありえなかったんだろう。だから彼女は気を引こうと、俺の視界に入るために、ベアトリスに近づいた。自分の方が数倍も美しいと強調するためにね」

 ヴィンセントの話にサラはいつしか素直に耳を傾ける。

 それは顔にも表れ、ヴィンセントにどこか興味を持つ好奇心の目になっていた。

 ベアトリスに夢中になる男だと思うと、尚更色々話が聞きたくなった。

「ジェニファーは自信があったのね。一緒にいれば、美しさを認められてあなたの気を引けると思った」

「ああ、そうだ。あれは偶然の産物だった。あの時気がついたんだ、ベアトリスに嫉妬や憎しみを強く持った人間が彼女に近づくと、シールドが弱まるということを。これを利用するしかなかった。だから二人が一緒のときに俺もアプローチした訳さ。ジェニファーが常にベアトリスと行動するために、俺は、二人が親友なんだと決め付けた。ベアトリスは慌ててたけど、いい印象を俺に与えようとジェニファーはまんまと俺の策に乗ってくれた。それに周りも上手い具合に俺たちが恋人同士と勝手に思い込んで、ジェニファーにもいい条件になった」

 ヴィンセントは一気に吐き出すように言った。

「だけど、ジェニファーは最初からベアトリスが嫌いだった。そしてレベッカとケイトが昨日あなた達が一緒に居たことを告げ口したために大爆発起こしちゃったという訳ね。プライドを傷つけられて、あなたも許せなくなったってことか」

「ああ、そういうことになるな。俺も必死にまた元に戻るようにいい訳なり、説得したけど、俺が下手に出るとわかると、図に乗り出してきた。今は彼女のペースにはめられてしまってるよ」

「これからどうするの? また新たにベアトリスを憎む人を探すの?」

「そんなの探したところで、ジェニファーのようにはならないさ。あれは本当に偶然の僥倖だったんだ」