席に座ればアンバーの笑い声が特に聞こえ、自分を嘲笑っているのがよくわかった。

 誰かが確実にジェニファーに伝えた。

 ヴィンセントとベアトリスがくっつくほどに接触し、そして一緒に授業をサボったことを。

 もし、誰かが伝えなくともあれだけ派手にいろんな人に見られていたら、必ず耳に入るのは分かりきったことだった。

 だからこそ言い訳もしないし、否定もしない。

「だって私もヴィンセントのことが好き」

 小さく呟いた。

 友情と恋のバランスは、これであっけなく崩れてしまった。

 ジェニファーを裏切ってしまったことは許されないかも知れない。

 でもヴィンセントはジェニファーよりも私を選んでくれた…… 前日の態度や言葉の端々からはどうしてもそう感じてしまう。

 ベアトリスにとって生まれて初めて恐ろしくうぬぼれを抱いたときだった。

 ヴィンセントに恋をして後先のことが考えられなくなっていた。

 そしてその時ヴィンセントが教室に入ってきた──。

 ベアトリスはすがりたい気持ちでヴィンセントを見つめる。

 必ず側に来てくれる。それだけを信じていた。少し笑みが顔に現れる。

 ところが、ヴィンセントは教室に入るなり「チェッ」と舌打ちをしたように、不機嫌な顔になった。

 ベアトリスの顔も見ず、自分の席についた。

「ヴィンセント…… どうしたの?」

 直接聞きに行きたいと、ベアトリスが立ち上がると、それに反応してヴィンセントも立ち上がり、近寄られては困るようにすっと移動した。

 そしてジェニファーのところへと行くと、 今度はジェニファーが不機嫌になりヴィンセントを突き放していた。それはクラスの皆も驚くほどだった。

 ベアトリスの目にはジェニファーはどちらも許せないと映った。

 だがヴィンセントは必死になだめようとしている。

 その光景は休み時間になる度に見られた。

 ベアトリスはその間ずっと一人ぼっちだった。