アメリアは事が収まるのを願いながら静かに居間のソファーに座っていた。

 そこで初めてベアトリスは病気のことを思い出した。

 忘れていたわけではないが、第一に考えてあげられなかったことが罪悪感へとつながった。

「アメリア、か、体の具合はどう?」

 焦って上手く言えない。

「すっかりよくなったわ。心配かけてごめんね」

 アメリアは無理もないと、この時ばかりは優しく笑う。

「ううん、私こそ何もしてあげられなくてごめん。アメリアが病気なのに私ったら自分のことばかり考えてしまって」

 ベアトリスは抱きついた。

 何もかも分かってると言わんばかりに、アメリアが優しく抱き返す。アメリアこそ罪悪感一杯だった。

 ベアトリスが言った『そろそろ私を自由にしてもいいとき じゃないの』と言う言葉が心に引っかかっていた。

 明るめの金髪に変わってしまったベアトリスの髪を見れば見るほど一層『自由』という言葉の重みがのしかかる。

 ぐっと堪えるしかなかった。

「ベアトリス、ゆっくりお風呂にでも入ればいいわ。簡単なものになるけど、その間に食事作っておくから」

「でも、アメリア、まだ安静にしてないと」

「大丈夫よ。いいから早くお風呂に入りなさい」

 アメリアはベアトリスを強制的にバスルームに押し込んだ。

 バタンとドアを閉めるとやるせなくなった。

 逃げる場所もなく、仕方ないとベアトリスはシャワーを浴びることにした。

 アメリアの言葉には逆らえないものがある。

 Tシャツを下からまくり、襟ぐりから頭が出る瞬間、鏡の中の自分と目が合った。

 髪もTシャツの襟ぐりを抜けてばさばさと下に落ちてくる。

 だが、それはいつもの髪ではなかった。