一般の女生徒で彼をちやほやしないのは彼女達くらいのものだった。

 しかしサラはベアトリスとヴィンセントを交互に見つめ、瞳が揺れていた。

「おや、僕は歓迎されてないみたいだね。まあ、その理由はわかるけど。さあ、ベアトリス、次のクラスに行くよ」

 ヴィンセントは放心状態のベアトリスを後ろから押して歩かせた。

 ベアトリスの足取りはぎこちない。

 周りの注目も浴びていたが、歩き方がおかしかったからではなく、ヴィンセントと一緒にいることが原因だった。



「ちょっとケイトどういうつもりであんなことを。思った人を呼び寄せる力が備わってるって知っててやったんでしょ」

 サラが怒りだす。

「やっぱりね。半信半疑だったけど、これではっきりした。ベアトリスはヴィンセントに心を奪われすぎてる」

「ちょっと待って、ケイト。じゃあ、初めっからこうなることを予想してあんなことを? いつの間にそこまで観察してたのよ。私はてっきりパトリックを呼び寄せるのかと」

 レベッカが目を白黒させていた。

「私もパトリックに伝わるかと思った。ケイトもレベッカもパトリックにベアトリスの居場所を教えた方がいいって言ってたし、本人が呼んでくれたら問題はなかった。それに反対したのがサラだけ。だから私達は対立してしまった。サラはパトリックが来たらベアトリスと仲良くなり難くなるのを恐れたんでしょ、自分の利益のために」

「グレイス、あなたにそんなこと言われる筋合いはないわ。あなたは自分の意見も言わず逃げたじゃない。あなただって心の底ではベアトリスと仲良くなりたかったんじゃないの。そうじゃなかったら人見知りの激しいあなたがベアトリスに声をかけるなんて考えられない」

「もうやめようよ。こんなことで争うの。今はそれどころじゃないわ。非常事態よ。ここは一致団結してヴィンセントからベアトリスを遠ざけることが優先だと思う。パトリックに連絡しましょう」

 レベッカの言葉にケイトとグレイスが耳を傾けたとき、サラが猛烈に反対し、発狂したように叫ぶ。

「だめ、パトリックにはまだ連絡しないで。お願い」

 サラの涙まで見せるその姿は他の隠れた理由が露呈した。

 三人は何も言わず顔を見合わせていた。