「誰だとかは言わなくていいです。今、その人に会いたいと心の中で思って下さい」

「ちょっと、ケイト何を言い出すの。今日のベアトリスは昨日よりも力が解放されている。そんなことしたら……」

 サラが言うと畳み掛けるようにレベッカがさえぎった。好奇心でそばかすまでざわめいてるようだった。

「いえ、そうする方がいいわ。きっと思いは届くはず」

「ちょっと待ってよ。なんなのよ、一体何を言ってるの?」

 ベアトリスは平常心を装うが、好きな人という言葉に反応して頭にもうすでにあの顔が浮かんでいた。

 ベアトリスは逃げ腰に、自然と後ずさる。

 その時背中に誰かがぶつかった。

 そしてしっかりとベアトリスの肩をそれは掴み、目の前では四人が険しく引き攣った驚き方をしていた。

 ベアトリスが「すみません」と恐る恐る首を後ろに向けると、そこには、頭に浮かんだとおりの端整な顔立ちの爽やかに笑うその人が居た。

「ヴィンセント!」

 ベアトリスはビックリたまげて、倒れそうになる。

 だがしっかりと肩を掴まれて支えられ、かろうじて震える足で立っていた。

 また触られたところがジンジンと熱い。

「探したよ。こんなところに居たのかい。ところでこの人たちと何を話してたんだい。それにいつの間に知り合ったんだい?」

 ヴィンセントはベアトリスには優しく語るが、顔を前に向けたとき鋭く四人を睨み付けた。

 四人は瞬間冷凍されたように氷つく。

 気を取り直し、負けじとケイト、レベッカは攻撃的な目つきをヴィンセントに返した。

 温和なグレイスでさえも訝しげに嫌悪感を露にする。