ヴィンセントとリチャードも訳が分からないと様子を見ていた。

「ヴィンセント大丈夫か」

「ああ、なんとか生きてるよ。親父はどうなんだ。なんでパトリックが俺たちを殺そうとするんだ」

 苦しそうに喘ぎながらヴィンセントは答えた。

「パトリックはブラムに逆らえないだけだ。命令を下したのはブラムだ」

「しかしなぜ。俺たちはただベアトリスのライフクリスタルを取り返そうとしただけだ。それなのにどうしてこんな仕打ちを」

「これには何かある。とてつもないことをブラムは企んでいる」

「コールはどうなったんだ」

「アイツは虫の息だ。このままでは奴が死ぬのは時間の問題だ。そして私達も危うい。最後にブラムは私達にもとどめを刺す事だろう」

 二人はこれからどうなるのか、声を上げて笑っているブラムを窮しながら見ていた。

 ブラムの笑い声が消えると共に、彼は突然姿を消した。

 全てのものが唐突なブラムの行動に戸惑い、彼を探し求めた。

 そしてブラムが再び現れたとき、彼の腕には静かに眠った美しい女性が白い布に包まれて大切に抱えられていた。

 ブラムの女性を見る目つきで取り憑かれたほどに心を奪われているのが誰の目にも映った。

 肌の色は透き通るように白く、それに映えるように 栗色の長い髪がとてもつややかに光っている。

 雲のようなベッドをベアトリスが寝ている側でまた作り、その女性を丁寧に寝かした。

 二つのベッドが横に並んでいる。

 そのベッドの間にブラムは挟まれて立っていた。

 二人の顔を交互にみて落ち着きを払っている。

 ブラムが連れて来た女性を見て一番驚いたのはアメリアだった。

「ブラムこれはどういうことなの。どうして彼女がここにいるの」

「エミリーのことかね。彼女はここでずっと眠っていたんだよ」

「彼女は死んだはずよ。崖から海に飛び込んだはず」

「見つかったのは、遺書と彼女の持ち物、そして海に浮かんだ彼女の服の一部。だが死体は見つからなかったんじゃなかったのかい?」

 アメリアはその通りだと黙りこんだ。

「彼女は確かに海に飛び込んだ。私はそれを見ていたのさ。そして彼女を救っただけ」

「じゃあ、どうしてこんなところで眠っているの…… まさか」

 ブラムの意図に気づいたアメリアの体から震え上がるような恐ろしさがこみ上げる。

 ベアトリスを見つめ引き裂かれるほどの悲痛な表情に顔を歪めた。