デバイスを握る手に力が入り、勢いで蓋を開けると同時に光が鋭い閃光になり剣の形を成す。

 ヴィンセントの背中にフォーカスすると何も考えられず、一心不乱で構えを崩さずパトリックは走り出した。

 加速した勢いに任せその剣をヴィンセントの背中にずぶりと突き刺す。

「うっ」

 ヴィンセントは声を漏らし、視線を胸元に向けると、光の剣が突き出ているのを目にする。

 痛みよりも、突然の予期せぬ攻撃に判断力を奪われ戸惑った。

 パトリックは歯を食いしばり、悲痛な叫び声とともにその剣を抜いた。

 それと同時に口から血が吐き出され、ヴィンセントはガクッと跪いた。

「ヴィンセント!」

 リチャードが驚き、動きが止まる。

 コールもまさかの展開に一瞬静止した。

 それをブラムは見逃さなかった。すっとコールの側に瞬間移動して手に持っていたライフクリスタルをあっさりと奪い取った。

 ブラムは口角を少し上げて冷ややかな笑いを浮かべたとたん、コールの腹に手をかざしてまぶしい光を大砲の弾を発射するかのごとく解き放つ。

 その光はコールの体を勢いよく通り抜けていった。

 コールは腹を抱えこみ膝をつき、上から見下ろすブラムを目を見開いて固まったように凝視していた。

 体が震え出すと前屈みに倒れ込み、深い吐き出すような咳がゴホッと二、三回溢れ出ては苦しそうに喘いでいた。

「すまないね。だがそなたの火の粉だ。それが自分に降りかかっただけだ」

 ブラムは冷血な眼差しを向けた。

 パトリックは今度はリチャードにフォーカスする。

 そして剣をリチャードに向けて突き刺そうとするが咄嗟に避けられた。

「どうしたんだ、パトリック。なぜ私達を狙う」

 パトリックは自分の意思ではないと葛藤した苦しい歪んだ顔をリチャードに向けた。

 リチャードはすぐにブラムの仕業だと読み取った。
 
 だがパトリックはやり遂げなければならなかった。

 地響きがするくらいのありったけの声をあげリチャードに再び襲い掛かる。

 リチャードは覚悟を決めて抵抗はしなかった。

 あっさりとパトリックの剣がリチャードの体を突き抜けた。

 パトリックは断腸の思いで剣を引き抜き、息を荒くして呆然と立つ。

 リチャードは傷口を押さえ、フラフラとしながら地面に倒れこんでいるヴィンセントの元で崩れこんだ。

 ヴィンセントは辛うじてまだ息をして、意識があった。

 急所は外れているようだった。

 リチャードに支えられ体を起こした。

 リチャードも急所を外れるようにわざと刺されたので命には別状がなかった。

 だがダメージは大きい。

 とにかく様子を見るしかなかった。

「パトリック、よくやった。お前はやはり優れたディムライトだ。誇りに思う」

「早くベアトリスを助けて下さい」

 パトリックは一刻も争うとブラムをせかした。

 ブラムは落ち着けと言わんばかりの余裕の笑みを見せるが、その笑は次第に声を伴い、最後には天下を取ったような勝ち誇った態度で声を高らかにあげた。

 パトリックはその態度を見て、困惑していた。