「コール、生きていたのか」

 やっつけたと思った相手が不気味に笑って立ち上がるその姿は、ヴィンセントとベアトリスを震え上がらせた。

「俺がそんな簡単にお前ごときにやられると思うのか。それよりもお客さんがいるぞ。ベアトリスの婚約者が」

「パトリック!」

 ベアトリスは思わず叫んだ。

 ヴィンセントと抱合っていたところを見られたことが後ろめたいのか、体が縮小したように身構え、ヴィンセントから少し離れた。

「お前、いつやってきたんだ」

 ヴィンセントが口を開くと、パトリックはその声に反応するかのように赤い目で睨みつけデバイスを取り出して光の剣を黙って向けた。

「おい、相手が違うだろう。それを向けるのはあっち」

 ヴィンセントはコールを指差すが、パトリックは爆風のような殺気を向けてヴィンセントに容赦なく襲い掛かる。

「いつものパトリックじゃないわ」

「ベアトリス離れるんだ」

 ヴィンセントは向かってくるパトリックの剣を避けたが、腕に少しかすって血が滲んだ。

 本気のパトリックだが、コールの時と違って攻撃ができない。

 ヴィンセントは非常事態に危機感を募らせた。

「まさか、影を仕込まれたか。どうして」

「そいつは影が三体も入り込むほどの憎しみと嫉妬の感情を抱いていたよ。どうだ、味方に攻撃を喰らう気分は」

 コールは愉快に笑っていた。

「パトリック、お願いだからやめて」

「ベアトリス、今のコイツに何を言っても無駄だ。影に支配されて我を忘れている。とにかくベアトリスは離れていて。俺がなんとかする」

 パトリックは何度もヴィンセントに剣を振りかざした。ヴィンセントは避けながらどうすべきか考える。

 圧迫した空間を作って影をおびき出そうとしてもパトリックは力のあるディムライトなために通用しない。

 パトリックの行動と自分の身を守ることに気を取られてしまい、他の事まで目が行き届かなかった。

 二人は暫く応戦しあっていた。