ベアトリスが思わずヴィンセントに走り寄る。

 そして野獣の姿のままのヴィンセントに抱きついた。

「ヴィンセント。無事でよかった」

「ベアトリス…… 俺が怖くないのか」

「怖いですって? どうして。言ったでしょ。私はヴィンセントが何者でもいいって、どんな姿でもヴィンセントはヴィンセントだから真実を受け入れるって。それに私、昔の記憶を取り戻したの。ヴィンセントとあの夏一緒に過ごしたこと全て思い出した」

 ヴィンセントはベアトリスの言葉を聞くや否や、我を忘れて力強く抱きしめた。

 ベアトリスもずっとずっと押さえていた感情を解放して無我夢中で抱きつき返した。

 そしてその時、ゴードンとパトリックが現れ、パトリックは目の前の光景をまともに見てしまった。

 ベアトリスが野獣の姿のヴィンセントと抱きついている。

 ヴィンセントの全てを受け入れたベアトリス。

 燃えるような嫉妬がパトリックを襲った。

 気が狂いそうになるのを必死に押さえ込もうと震えていた。

 ゴードンはパトリックを連れてきたが、異様な雰囲気を察知して突然何かに怯え出し、逃げるようにまたぱっと姿を消した。

 ゴードンが感知した危険はパトリックの背後にじりじりと迫る三体の影だった。

 パトリックは目の前の光景に気を取られて危機を感知できずにいると、影は遠慮なくパトリックの体にすっと馴染むように入り込んでいった。

 パトリックの目が赤褐色に染まった。

 そして笑い声が部屋の隅から響くとコールがむくっと立ち上がった。