「これでわかっただろう。俺はアイツに成りすましていただけなんだ」

「何のためにそんなことを?」

 ベアトリスは質問した。

「ヴィンセントから情報を得て、ホワイトライトのあんたを探すためだったんだよ」

「私を?」

「そうさ、俺はヴィンセントと同じようにダークライトさ。以前に言っただろう、悪魔だって。その悪魔が欲しがるもの、それがホワイトライトの持つライフクリスタルなのさ」

「私、そんなもの持ってないわ」

「それが、持ってるんだよ」

 コールは素早くベアトリスの前に移動し、彼女の心臓を指差した。

「ここにな。お前の命さ」

 ベアトリスはやっと自分がなんのために連れてこられたか理解したがもう遅かった。

「嫌っ!」

 逃げようとするが、前にコールがふさがっては身動きできない。

「今さら逃げてどうするんだ。悩みを一杯抱えて苦しいんだろう。俺がそれを取り除いてやるっていったじゃないか。あんたは目を瞑っているだけでいいんだ。安心しな。すぐに楽にしてやるから」

 コールの顔が薄明かりの中で不気味に生える。

 ベアトリスは恐怖で息が止まりそうになるほど怯えた。

 もう動くことができなかった。

 顔を背け、目を強くギュッと瞑る。

 ──これが逃げてきたことへの結果。そして私はこのまま人生を終える……

「いい子だ。そうだ、そうやっていればすぐに楽になる。何もせずに俺に任せるだけで、お前はこの苦しみから解放される」

 ──何もしないでこのまま終わる? そんなの嫌! 

 ベアトリスは突然目を見開いた。

 コールの迫る手を突然掴んでもてる限りの力で噛んだ。

 コールは悲鳴をあげたとき、一瞬の隙をついて突き飛ばし、コールからすり抜けてドアに向かった。