ベアトリスはサラに引っ張られてホテルのエレベーターに乗せられた。

「どこへ行くの?」

「実は部屋を取ってあるの。ほらこんな格好でしょ、お化粧崩れにも気を遣わないといけないし、大人数のパーティだとトイレって混み合うから、ゆっくりできるように個室のトイレを確保したって感じね」

 ベアトリスは唖然と聞いていた。

 エレベーターが止まると、サラは真剣な顔になり、部屋へ向かう。

 ベアトリスはただ言葉なく後をついていった。

 カードキーを差込みドアを開け、二人は部屋へ入る。

 サラの緊張感が高まり、事がうまく行くことを願いベアトリスを見つめて静かに微笑した。

 ベアトリスは何も知らず、部屋を見渡した。

 クィーンベッドが一つあり部屋の真ん中辺りに置かれている。

 ベッドの前には引き出しつきの棚、その上には大きなテレビも置かれ、窓際には小さなテーブル とゆったりと座れる椅子が二つ置かれていた。

 その端にはデスクがあった。

 壁紙や絨毯の色合いも暖かみのある暖色で落ち着き、高級感が漂っていた。

「きれいなお部屋なんだね」

 ベアトリスが窓際に寄って景色を眺めている。

 そして大きく欠伸をした。その欠伸をサラは見逃さなかった。

「ベアトリス、ちょっと疲れたんじゃない? 時間かかるかもしれないからベッドで少し横になってていいよ。それじゃ、バスルームでちょっと身支度してくるね」

 サラがバスルームのドアをバタンと閉めると、ベアトリスはベッドの端に腰掛けた。

 座りながら窓の景色を見ている。

 そしてまた欠伸が出て、それが短い間隔で何度も出るようになってしまった。

「やだ、なんか眠たくなってきた」

 堪えようとするが、強い睡魔が瞼を重くする。

 何度抵抗しても、その眠気は決して追い払えなかった。

 そして10分経ったころには、ベッドに体を横たわらせ眠りについていた。

 バスルームのドアをそっと開け、サラはベアトリスの様子を見る。

 ベッドに倒れこんだように横になっているベアトリスを見ると、息をふぅーっと吐いた。

「薬が効いたみたいね。だけど、あまり長く持ちそうにないわ」

 サラはベアトリスの足をベッドに乗せ体をごろんと押してベッドの中央付近に来るように寝かせてやった。

 横向きになりベアトリスは無防備に眠っていた。

「これを見たらヴィンセントは理性を保てないかも」

 そんなこと言ってる暇はないと、サラは大急ぎで会場に戻って行った。