サラは嬉しそうにスプーンをすぐに手に取り、早速すくって口の中にいれると、美味しいと言わんばかりの笑顔をベアトリスに向けた。

 それに釣られてベアトリスも食べだした。

 アイスクリームの甘さと冷たさが頬を緩ます。

 サラの言葉はこの日のこととは全く関係なかったとベアトリスはがっかりしたものの、 やはり全ての出来事は夢、とそういう風になっていった。

 二人は暫く無言でアイスクリームを頬張っていたが、目が合うと、くすっと笑いが洩れた。

「ねぇ、だけど私のことベアトリス様って呼ぶの止めてくれる? いくら一年上だからといってプリンセスでもあるまいし、やっぱり変。ベアトリスでいいわよ。それに私達もう友達でしょう」

 スプーンを持ってたサラの手が震え、目を潤ませてベアトリスを見つめた。

 大げさでわざとらしいが、悪い気はしない。

「えっ、友達…… いいんですか、ほんとに」

「ちょっとそこまで感激することでもないでしょうに。ここだけの話だけど、私これでもクラスではいじめられることもあるの。こんな私なんかと友達になってもらう方が恐縮よ」

 ベアトリスがため息を一つついて寂しく語る。

 素直に喜べばいいのに、つい否定的な言葉を発してしまった。

「何を言ってるんですか!」

 サラが拳でテーブルを叩いたと同時に、一気に周りの視線が集まった。

「ちょっと、サラ、落ち着いて! どうしたのよ」

 ベアトリスはおどおどと辺りを気にしながら小声でなだめた。

「だって、ベアトリス様…… いえ、ベアトリス…… がいじめに遭うなんて許せません。どこのどいつですか。仕返しに行きます」

「だから、どうしてそう話が変な方向に行くの。大丈夫だから。それに私を守ってくれる素敵な友達もいるのよ」

 ベアトリスは焦った。サラは極端すぎる。

「素敵な友達ってあのジェニファーとヴィンセントという人たちですか?」

「どうして二人のことを…… やっぱりあれだけ素敵だと学校で知らない人いないよね。私も彼らと友達なことが不思議なくらいだもの。私が側にいたら皆気になっちゃうよね」

「いえ、違います。あの人たちが身の程知らずです。何か下心があって近づいているのがバレバレです」

 興奮しすぎてサラはまた暴走しだした。

「ちょっと、まって、下心があるってどういうこと?」

 ベアトリスはまた眉間に皺がよった。