「小さい時に婚約したという噂を聞いて、なんかロマンチックだなってずっと思っていたんです。きっと魅力ある素晴らしい人なんだとお話だけで私の憧れにもなってました。まさかその婚約相手がここにいらっしゃるなんて、そう思うと嬉しくってつい声をかけてしまったんです」

「でもなぜ、私だとわかったの?」

 ベアトリスの顔はまだスカッと晴れない。

「あっ、それはその、名前が偶然同じだったので、以前から存じてましたし、顔で確認というより私の勘です」

 滑らかに話していたサラの口調が少し詰まった。

 ベアトリスも半信半疑で聞いていた。

「だけど、変なこと言ってなかった? 光とか、解禁とか、それに私の両親の事故がダークライトのせいとか」

「それは、あの、光のせいで髪が違う色に見えたので、お噂ではベアトリス様はプラチナブロンドだと聞いてました」

 ベアトリスは髪を押さえはっとした。

 子供の頃は確かに透き通るくらいの金髪だった。

 でも今はダークストロベリーブロンド。

 こんなにも髪の色が変わるものかと、がっかりした時期もあった。

 今もあれくらいの色だったらジェニファーよりも目立った髪だったかもしれない。

 顔のことはおいといて、髪は確かに昔はきれいだったとベアトリスは思い出していた。

 ベアトリスが髪の話に違和感をもたなかったので、サラはいい調子だとばかり話し続ける。

「解禁なんて私言いましたでしょうか。感激と言ったつもりだったんですけど、あまりも驚いて変な発音だったのかもしれません。それからご両親の事故のことはほんとにお気の毒です。あれは車のライトが故障して夜道がはっきりと見えなくて事故に繋がったと聞いたのでダークライトとつい勝手に、あっ、でも又聞きなので私も詳しいことは全然わかりません」

 サラは一度下をうつむいてちらりとベアトリスを垣間見る。

 ベアトリスはサラの言ったことをきちっと覚えてる訳でもなく、すでに曖昧になってしまい何も言い返せないままきょとんとしていた。

 その時、注文していたチョコレートパフェがテーブルに運ばれてきた。