ヴィンセントが誰を誘うか気にならないと言えば嘘になる。

 何も考えないようにすればするほど、プロム自体が頭の中から消えていくのだった。

 何も考えなくとも、本番はパトリックに任せていればそれでいいと、最終的には投げやりになっていた。

 プロムは通常男性が先頭に立ってエスコートする公式なデートの場であって、女性に気配りができないといけない。

 その点パトリックはベアトリスには適役ともいえ、もちろんパトリックはこの日を楽しみにしている。

 そしてその時ヴィンセントが参加することも知っている。

 もう賭けなど必要とはしないが、ベアトリスがきれいさっぱりヴィンセントを忘れることができる特別な日になるとパトリックは陰で笑みを浮かべていた。

 しかし、ヴィンセントは違っていた。

 ヴィンセントがサラと参加するのには計画があった。

 ベアトリスと二人っきりになるチャンスを作り、これに賭けていた。

 サラもまたそれに協力する。

 ベアトリスとパトリックの邪魔をして、ヴィンセントをベアトリスと二人っきりにさせる。

 それだけが目的だった。

「とうとう本番は今週の土曜日よ。準備はいい?」

 サラがヴィンセントと廊下で話している。