日がすっかり落ち、空には星が無数に広がる空の下、草原の中でブラムは根の生やした木のように動かずじっと立っていた。

 アメリアにエミリーのことを言われ心をかき乱されていた。

 アメリアの言う通り、エミリーはブラムが過去に恋焦がれた女性だった。

 その思いはまた蘇り、会いたい気持ちが募っていく。

「まさかアメリアにあんな風に言われるとは……」

 ブラムは一点の輝く星を見る。

 太陽の光があるうちは気づかれもせず、暗くならないと輝かない星の光。

 だがその輝きは夜力強く光る。

 誰にも気づかれない自分の本心のようだとふと笑った。

 アメリアの誤解が解けても、決して許されることがないのはブラムには充分すぎるほど判っていた。

 だがブラムは自分を貫く。

「私は誰にでもいい加減な奴だと思われやすい性質のようだ。その方が自分には都合がいいのかもしれない。しかし本当の私を知ってくれていたのはエミリー、君一人だった」

 夜空の星を観客に見立て独り言を呟いた。

 ブラムが忘れられない女性、エミリー。

 彗星の尾のようにずっといつまでも後を引き続けていた。

 しかしこの時は忘れようと、ブラムも必死に無になろうとしていた。

 暫し過去のことは封印しておきたかった。

 気を取り直し、ブラムはベアトリスのことを考える。

 目つきが急に厳しくなった。

 自分がこの時やらなければならないことは何か再確認しているようだった。